「森でつないだ時間と想い 〜年長さん、旅立ちの日〜」

卒園式までの日にちが近づき、どこかそわそわとしながらも、いつものようににっこにこで過ごしていた年長さんたち。
感謝の気持ちを込めた和紙作りでは、自分で選んだ色が混ざり合い、思いがけない美しい色に変わっていく様子を、目を輝かせながら楽しんでいました。

新年度へとつなぐ畑づくりでは、小雨の中、全身泥だらけになりながら腐葉土を集める日々。何日もかけて積み上げたその量は、軽トラック3台分にもなりました。「これで来年に託せるね」と満足そうに笑う姿に、頼もしさがあふれていました。

畑作業当日は、保護者の方々の力も借りて、菌ちゃん畝を作り直します。石を拾い、濡れた落ち葉を何度も運び、丁寧に畝を整えていく子どもたち。土を掘ると現れる小さな幼虫たちには、「ここにしよう」と並べて、そっと土のお布団をかけてあげる優しさも見られました。

啓蟄

記念品の土器づくりでは、いよいよ焼きの日。薪を集め、火を起こし、土器を入れてさらに火を重ねていく作業に、子どもたちはじっと耳を澄ませ、火の音から中の様子を感じ取ろうとしていました。
2時間後に現れた土器に、「考古博物館と一緒!」と歓声が上がります。中には割れてしまったものもありましたが、その発掘作業では「この模様、私の!」と宝物を見つけたような喜びに変わっていきました。遠い昔の人々も、きっと同じ気持ちだったのかもしれません。

活動のひとつとして取り組んだ椎茸の植菌。
小さな穴に菌を打ち込みながら、「ここから本当に出てくるのかな?」と不思議そうに見つめていた子どもたちの姿が印象的でした。

昨年植菌した椎茸、収穫しました。

卒園式の日には、その原木を1本ずつ記念として持ち帰りました。
すぐに形として現れるものではなく、椎茸が顔を出すまでには、およそ1年半という時間がかかります。けれどそれは、目に見えないところでじっくりと育ち続ける命の時間。
年長さんたちがこれから歩んでいく日々と重なるようでもあります。

ふとした頃に芽吹く椎茸とともに、ここで過ごした時間や仲間との思い出も、また心の中でそっと顔を出してくれたら嬉しいです。これからもそれぞれの場所で、ゆっくりと、でも確かに育っていくことを願っています。

卒園式前の最後の週は、練習の日々。年長さんは、これまでの活動を振り返りながら、自分の言葉で思いをまとめていきます。歌や劇遊びは、そのたびに台詞や動きが変わり、笑いがあふれる時間に。そんな何気ない一瞬一瞬が、かけがえのない宝物になっていきました。

「式の会場の芝を集めています」

そして迎えた卒園式当日。
朝から保護者の皆様とともに作り上げた会場には、温かな空気が満ちていました。いつもの森も、やさしい陽ざしに包まれ、子どもたちの門出を祝ってくれているかのようです。

「まもなく年長列車が進みます〜」
そんな声とともに、笑顔でつながりながら歩く姿は、これまでの日々そのものでした。

式では、一人ひとりが堂々と証書を受け取りました。

お別れの言葉ではそれじれの感想は違うけれど、必ず仲間との思い出が入っていました。登山やトレラン、キャンプでの挑戦や葛藤、けんかをして心が折れそうになった日も、新しいことをはじめようとした時も、そばにはいつも友だちがいてくれたこと。力を合わせてやり遂げたダンスや演奏の喜び。
「友だちと一緒に成長できたこと」が、何よりの宝物だったと、みんなが同じように伝えてくれました。そして、「みんな仲良く、平和な世界でありますように」と願うその言葉に、胸が熱くなりました。

劇遊びでは、役になりきり、まるで夢の世界の住人のようにいきいきと演じる子どもたち。保護者の皆様の温かな手拍子と笑顔に包まれ、会場全体がやさしい空気に満ちていました。

最後の持ち寄りパーティーでは、並んだごちそうの数々に思わず歓声が上がります。その光景は、まるで劇で演じた「くるみ割り人形」のお屋敷のパーティーのよう。ひとつひとつに込められた愛情が、心にもお腹にもあたたかく広がっていきました。

謝恩会での温かな言葉に、これまでの時間が次々と思い出されます。
笑った日も、悩んだ日も、すべてがつながって、今ここにある——。

この日、この瞬間、この仲間と過ごした時間は、かけがえのない宝物です。 

「さよならあんころ餅」で、みんなでまあるく手をつないだとき、
それは年長さんが目指してきた「みんなが友だちになれる世界」の形のようでした。

手をつなぎ合ってできたその輪には、一人ひとりのやさしさが込められています。
そしてそれは、いちばん小さくて、いちばんあたたかな“平和のかたち”なのかもしれません。

森で育ったこの想いが、これからもそれぞれの場所で大きく根を張っていきますように。

たまちゃん

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