「醤油仙人と過ごした日―畑から食卓へ、子どもたちの心が育つ時間―」

美味しくいただいた夏・秋野菜もそろそろ終わりを迎えた畑。
みんなで残った根っこをスポンッと抜き、畑をきれいに整えました。


「次は大根がお口に入る番だね~」と、子どもたちはもう楽しみ顔。
紅葉がひらひら舞う中、湖の周りを散策すると、季節の移り変わりも全身で感じていました。


翌日は、待ちに待った醤油しぼりの日。
味噌は毎年仕込んで一年後に再会しますが、醤油は「混ぜる・天地返し」をくり返し、長い時間と手間がかかる発酵の世界。

樽のふたを開けた瞬間、ふわりと広がる香りに子どもたちの喉が「ゴクリ」。
そこへ姿を現したのは、一見“仙人”のような佇まいの職人さん。
恐る恐る声をかけると、とても優しい笑顔で迎えてくださり、まさに“醤油仙人”と呼びたくなる存在でした。

古くから伝わる醤油しぼり機を使いながら、歌やお味見も交えて、楽しく、そして丁寧に教えてくださる仙人。

ぽたりぽたりと流れる醤油のいい香りに喉が「ゴクリ」
「指一本のお味見が、指5本のお味見になり…」


目に見えない微生物の働きや、発酵が進む仕組みを聞くたび、子どもたちの目はみるみるうちに輝いていきます。

そしてしぼりたての生醤油を、ゆでたてのうどんにひとたらし。


「美味しい!」「おかわりある?」と声が飛び交い、幸せな時間が広がりました。
帰り際、仙人の長いひげとそっと握手をして、「またね」と名残惜しそうに手を振る姿が印象的でした。

醤油仙人とのお別れ。

次の日は、みんなでのご飯づくり。
昨日の生醤油と、子どもたちが育てた大根を使って「おでん」を作りました。
人気の餅巾着づくりでは、年長さんから年中さんへ“申し送り”。

「お揚げは端っこまで菜箸でくるくるね」
「ゆっくり開くんだよ」
「干ぴょうはしっかり結ぶんだよ!」

小さな技の伝承が、なんだか頼もしくて、微笑ましい時間でした。

鍋がぐつぐつする間には、帰国する保育留学生のためのさつま芋蒸しパンづくり。
お腹が空きすぎて、ソーセージに干ぴょうを巻いて枝に刺し、“オリジナル串”を作って食べている子を発見し、思わず笑顔に。

登園のたびに「富士山って今日爆発する?」と真顔で聞いてきた保育留学生。最初は返答に困るほど不思議な質問も、子どもたちにとってはすぐに“話題のひとつ”になり、一緒に笑ったり考えたりする時間へと変わっていきました。
言葉や文化が違っても、子どもたちは戸惑う相手をそっと遊びの輪に引き込み、日本の歌を教えたり、虫に挑戦するのを見守ったりと、自然な関わりの中で“できること”を増やしていくのです。

「さつま芋蒸しパン、どれにしようかなぁ〜」

大人が教えるよりもずっと軽やかで早い子ども同士の協調に、「なるほど、こうやって世界は広がっていくんだな」と感じさせられました。

そして、来週にはまた新しい国のお友だちがやって来ます。
どんな出会いや発見が待っているのか、楽しみがふくらみます。

子どもたちの「やってみたい!」が広がる三日間。
畑しごとも、醤油しぼりも、ご飯づくりも、子どもたちの心と体がしっかり動いた時間でした。
季節と人との出会いの中で、これからもたくさんの“育ちの瞬間”が生まれますように。

にっこにこの森には、笑いと驚き、そして発見がいっぱい。
また一緒に、元気いっぱいあそびましょうね。

たまちゃん

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