いよいよ田植えが近づいてきました。
田んぼにたっぷりと水が入り、子どもたちはお田植えに向けて泥の中を歩く練習を始めます。
まずは前歩き。次は後ろ歩き。慣れてくると走ったり、ジャンプしたり、気づけばワニになったり。



泥の中には、子どもたちだけが知っている秘密の変身スイッチがあるようです。
全身を泥で覆い、「全身泥パック完成!」と嬉しそうなお友だちもいれば、顔まで泥んこになって大笑いするお友だちもいました。
身体が冷えると皆で亀の甲羅干しの様に暖まっています。

そんな泥遊びの中で、とても心に残る姿がありました。
泥の中へ入ることが苦手だったあるお友だち。
みんなが楽しそうに遊ぶ姿を見ながらも、なかなか最初の一歩を踏み出せませんでした。
そして迎えた、4年目の最後の泥遊び。
ついに、そのお友だちがみんなの輪の中へ入っていったのです。
4年間という長い時間。
どんな気持ちで仲間たちを見つめていたのでしょう。
どれだけ勇気をためてきたのでしょう。
けれど、一歩踏み出すことができると、その後は驚くほど自然でした。
泥をすくい、泥を浴び、誰よりも泥を楽しんでいるような姿。
最後には「やりきった!」という表情が顔いっぱいに広がっていました。
その輝く笑顔は、太陽にも負けないほど眩しく見えました。
泥だらけになった子どもたちが橋の上から川をのぞいている姿を見ていると、魚たちもきっと、
「今日はなんだか変な生き物がいるぞ?」
と思っていたかもしれません。

泥遊びは、ただ汚れる遊びではありません。
「これは何だろう?」
「どうしてこうなるんだろう?」
が次々に生まれる、不思議の宝箱です。
あまりにも楽しそうなので、大人向けの「泥んこデー」も作りたくなってしまうほどでした。
泥遊びの後は、桑の実をぱくり。
自然が用意してくれた甘いおやつに、子どもたちの顔もにっこり。
森のレストランは、今年も大繁盛です。
森では最近、リレーや長縄跳びが大人気です。
まだ縄に足が引っかかってしまうこともありますが、「せーの!」「ぴょん!」「どんぶらこ!」と、その子に合わせた掛け声を考えながら挑戦しています。
上手に跳べることよりも、「どうしたらできるかな?」と仲間と一緒に考える時間が、子どもたちを大きく育ててくれているように感じます。
そんなある日、森で一匹のモグラの亡骸を見つけました。
みんなで見ていると、死んでいるはずのモグラがゆらゆらと動いています。
「なんで動いてるの?」
不思議そうにのぞき込む子どもたち。
よく見ると、シデムシがモグラを食べながら動かしていたのでした。

すると一人のお友だちが、
「お墓つくろうよ。」
とつぶやきました。
そこで、
「でも、シデムシはどうなるのかな?」
と尋ねると、
「うーん……。」
子どもたちは考え込みます。
命を大切にしたい気持ち。
でも、自然の中では別の命も生きていること。
簡単には答えの出ない問いです。
みんなで話し合い、今回は自然のままにしておくことにしました。
そして子どもたちは、モグラの周りに花や葉っぱを優しく飾ってくれました。

まるで森の小さなお別れ会のようでした。
ところがその日の帰り。
見に行ってみると、モグラも、飾った花も、すべてなくなっていました。
鳥が運んだのでしょうか。
他の動物が食べたのでしょうか。
誰にも分かりません。
ただ、朝までそこにあったものが、今はもうない。
その自然の力に、大人も驚かされました。
子どもたちは、どんなことを考えたのでしょう。
「かわいそう。」
「どこへ行ったんだろう。」
「自然ってすごい。」
それぞれの心の中に、それぞれの答えが生まれていたのかもしれません。
泥の中で勇気の一歩を踏み出したことも、縄跳びで工夫を重ねたことも、モグラの命について考えたことも。
今週の子どもたちは、遊びながら、笑いながら、そして時には立ち止まりながら、たくさんのことを感じていました。
森や田んぼは、ただ遊ぶ場所ではありません。
挑戦する勇気を教えてくれる場所であり、命のつながりを感じさせてくれる場所でもあります。
来週はいよいよ田植えです。
泥んこの中で育つのはお米だけではありません。
子どもたちの心もまた、ゆっくりと、たくましく育っています。
にっこにこの森には、笑いと驚きと発見がいっぱい。
さあ、次はどんな物語が待っているでしょうか。
また一緒に、元気いっぱい遊びましょうね。
たまちゃん

